これまで20年ほど色々なカセットデッキを弄ってきました。弄ったデッキの大半は、ここで紹介しましたが、まだ紹介していないナカミチとか海外のデッキもあります(現在所有中のものが多いです)。TC-FX7は以前からいつか弄ってみたいなと思っていたデッキの一つです。DIGIC DECKは1980年頃、当時ソニーのオーディオの新しい方向性を出したモデルで、正しい解釈かどうかは分かりませんが、FXシリーズはそれまでの大きな録音用ツマミを持つオーソドックスでマニアックなデザイン(Kシリーズ)から、FX1010を象徴とするフルフラットのオシャレなデザインであったような気がします。他社と差別化する必要もありますし、ソニーの技術力を示すものでもあります。他方DATなどの新しいデジタル化の波も押し寄せてきており、様々な録音方式の選択肢にメーカーも苦悩していたと思います。しかし皮肉なことにその後DATやMiniDiscは消え、カセットテープは今も生き残っています(電器屋さんで新品を売っている)。最近、ほぼ死んでいたアナログレコード/プレーヤーが息を吹き返したことには驚きましたが。
FX7は当時、雑誌などでは話題にはなっていた気がします。電器屋さんの店頭でも見かけてイジェクトしてヘッドを見たこともあると思います。特徴としてはデッキの高さがカセットテープとあまり変わりません。カセット64mmに対してなんとパネル高70mm、薄いデッキならカセットをK88や後のFX606Rのようなトレイ式の横型にすれば良いと思うのですが、ソニーはあえてそれを縦型で限界に挑戦してきました。まったくソニーらしいです。しかもFX7はK88やFX606Rよりもパネル高さが10mmも低いのです。逆に横型の方が、ローディング機構やメカを薄くすることが難しいのでしょうか。本機はオークションで電源は入るが不動のジャンクで入手。1万円超でしたが、同じ2ヘッド機のFX6に比べるとかなり高いです。
届いてみると噂通り薄い。しかしずっしりとした重みがあります。中身も時代なりに詰まっています。電源を入れてみると、モーターは回るもののリールは回らず、アイドラーが中で空回りしている様子が見えました。またダイレクトドライブですがキャプスタンは回っていないようです。
早速メカを外しますが、配線の一部が基板とラッピングワイヤで接続されているため、メカを本体から 完全に分離することが出来ません。窮屈な作業となります。またヘッドがメカの底とほぼ同じ高さなので、ヘッドを下にしておくとヘッドに負担がかかる可能性がありますので、ヘッドは上か横にしてメカを置くことになります。興味があったのですがFX7の新開発S&Fタイニーヘッドは通常のS&Fヘッドの半分の高さしかなく、しかも配線は横から出すようになっています。真ん中左に見える真鍮色の物はサマリウムコバルトマグネットを搭載したクォーツロックBSLグリーンモータ、メカの駆動はシンプルに2つの大型のソレノイドで行い、写真の右側がヘッドの上げ下げ、左側奥のソレノイドはブレーキを上げ下げしますが、同時にピンチローラも持ち上げるようになっています。メカの裏側に付いている基板はBSLモータのサーボアンプ基板です。本機はダイレクトドライブのシングルキャプスタン、デジタルカウンターですので、ベルトは使われていません。そのため信頼性は高そうですが、前のオーナーは昭和60年に3回ほど修理に出したようで、修理確認票が底板に貼られていました。どこが悪かったのでしょうか。
カセットボックスを開けたまま再生を押しても、ヘッドが上に上がらないように、カセットボックスと連動したストッパーが(爪)あるのですが、それがストップ状態のまま固着していました。このままではカセットボックスを閉めても、ヘッドは上がりません。グリスの固着が認められるのでメカを完全に分解してグリスを置換することにします。
まずアイドラーのゴムを交換します。古いアイドラーはそれほど固くはなっていませんでしたが、表面がつるつるで食いつきが悪そうです。純正のゴムの厚みは2.5mmですが、市販で2.5mm厚は入手が難しいので、2mm厚と隙間を埋める0.5mm厚を重ねました。硬度は食いつきがいいように少し柔らかい65を選択。以前K777でも同じようなことを書いた気がします。しかしアイドラーの裏側はこのように芯の部分がひび割れしています。経年でよくみかけるものです。隙間に接着剤など流し込んでも良いですが、下手に劣化を早めてしまう可能性もあり、このままとします。またアイドラーの金属の支柱部分のベースの板の裏側が一部黒くなっていますが、おそらく以前フェルトが貼ってあり、アイドラーが左右に振れる際にアイドラーの面がリールに平行に接触するようにしているのだと思います。そこで同じ厚み(回転してもシャーシにギリギリ接触しない厚み)のプラスチックの板を張り付けておきました。
これはアイドラーが接触する、リールの裏側ですがやはり左右とも軸周囲が割れています。これもすぐには問題なさそうなので、このまま放置します。
ヘッドも外して、古いグリスを拭き取り、新しいグリスを塗ります。これで分解作業は折り返しになります。グリスは少量、塗りすぎると抵抗でメカの動きが悪くなります。また本機はメカを分解する際、左右のソレノイドも外す必要がありますが、ソレノイドの固定位置は非常に重要です。マニュアルの指示に従いますが、位置が悪いとヘッドが上がった際、ピンチローラがキャプスタンに接触してしまい、ポーズなのにテープが巻き取られたり、逆に再生時にピンチローラがうまくキャプスタンに接触せず、テープが巻き取れなかったりします。また固定もしっかりしておかないと、ソレノイドの振動でネジが緩む可能性があります。
メカが組み終わったら、次はサーボアンプ基板の調整を行います。やはりBSLモータは回りません。マニュアルに従い信号を見ますが、経年で真っ黒になっている可変抵抗器を回しても信号に何も変化ありません。ゼロ点や振幅が変化するはずですが。
基板の制御IC等には正しく電圧が供給されていることが確認できました。そこで基板の可変抵抗器を全部交換しました。ちなみに写真の一番左は外観は可変抵抗器のようで実はTESTとSERVO切り替えスイッチになっています。これは超小型のスライドスイッチに交換しました。確か以前K666かK777でも同じ作業をしたことがあります。外した抵抗器の抵抗値をテスター見たところ、ほぼ無限大で回しても導通ありません。こうなるとケイグも出番ではなく、交換しかありません。アマゾンで安い抵抗器詰め合わせを買いました。交換後は信号が調整できるようになり、BSLモータも回り始めました。よかった一安心です。
アイドラーもゴムを交換してリールが回るようになりました。メカの動作は問題なさそうです。そうするとすぐにカセットテープを再生して音を聴いてみたくなります。カセットを入れ、ヘッドフォンを繋ぐと、右チャンネルは問題ないのですが、左チャンネルからは、ポコッポコッと、ものすごい破裂音がします。しかも音が小さい。今度はLine outにオシロを繋いでみると、再生と同時左チャンネルの信号が画面から消えてしまいました。これはいけない、上の回路図の赤い矢印の処にテスターを当てると再生時に-8~9Vが出ていました、なんじゃこりぁ。
回路図から、ここに-9Vが出るパスとしては後段のヘッドフォンアンプしかなく、OPアンプの内部がショートして、入力端子に電源電圧が出てしまっているのです。このOPアンプの故障パターンは、以前別の機種でもありました。ヘッドフォンアンプ基板を取り外すのは手間でしたが、外してサクッとIC交換、OPアンプは手元にあった三菱の定番、M5238を入れておきました。これでノイズも完全に消えました。
最後はメータゲインや再生録音ゲインの調整ですが、やはり可変抵抗器がみんなダメですね。振れだけでメータが振り切れます。交換しました。交換して何も悪いことはありません。
交換後はテストテープによる調整も非常にスムーズにできました。
音ですが2ヘッドということもあり、メタルテープではそれほど不満はありませんが、ノーマルではレンジの狭さを感じます。録音も出来ましたがバイアスも調整できないので、DCアンプ構成でも音の変化は大きいです。リニア電子カウンター、ファインフェザータッチ・ロジックオペレーション、微調ができるロングストロークスライド録音ボリューム搭載。
中央が新開発のS&Fタイニーヘッドで高さが8.4mm、あれっ?カセットハーフの高さが64mmで、FX7のパネル高さが70mmと言うことだと計算が合わないような。ヘッドはハーフの中に入り込むからOK?それにしてもヘッドの下や底板、カセットの上にも板バネや天板などスペースあるよね?ちなみに左側の消去ヘッドも新開発で、マグネフォーカス4Gap F&Fタイニー消去ヘッドになります。
*名称、数値等は、ブログ「ソニー坊やと呼ばれた男」様掲載のソニーのカタログを参考にさせて頂きました。ありがとうございます。




















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